□ 劣等感 □

 

 彼も彼も彼も死んだ
 私は逃げようとしていた
 恐怖に支配されて

 何の役にも立たない
 どころか
 足を引っ張ることまでして
 彼にも彼女にも遠く及ばない
 この手は届かない

 力のないことが
 こんなに心苦しいこととは思わなかった
 いつまで経っても必要な存在とはなれず
 こんなモノ
 最初からいなければよかったのに

 

(460年6月11日、夜)

 

 

(『ラクリマ・マテリア』より ◆ 2004年2月初出)

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