□ 歓 喜 □

 

 左の袖口から 目に飛び込んできた
 Tの意匠
 ──着てくださったんだ
 身体中にひろがる 弾けるような感覚
 心臓に星が入り込んだみたい

 おかしな顔をしてしまってないだろうか
 そんなことを思うより先に
 笑いがこぼれていってしまう
 穴の空いた袋のように 止めようもない
 空っぽになったら
 何か重石をつけておかなければ
 足が地面から浮きあがってしまいそう


 もう十分です
 仮令この地を二度と踏むことがないとしても
 この気持ちは二度と忘れないから
 あなたに
 今日のこの日が佳き日でありますように

 

(460年6月26日、朝)

 

 

(『ラクリマ・マテリア』より ◆ 2003年2月初出)

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