□ 宝箱一つ □

 

 宝箱が一つ。

 

 ハイブコアに潜入することになって…Gはちょっとだけ悩んでいた。

 ハイブがどうで、とか自分の命が心配で、というわけじゃないのが自分でもなんだと思うのだが…宝物のことだ。

 Gの一番大切な宝物が一つ…宝箱の中にしまってある。

 宝箱と言っても、葉巻か何かが入っていた箱を使わせてもらって箱の底に一番綺麗なハンカチを敷いただけのモノなのだが、それなりに見えるのでGは宝物と共に気に入っていた。

 問題はそれをどうするか、だ。

 ハイブの中には魔法の能力を喰らって魔法を使うヤツもいると聞く…そんなヤツが出てきてこの宝箱が…その中身が…壊れてしまったら!

 大事なもの…本当はいつも身につけていたいのだけれど、落としてしまったらどうしよう…とか、汚れたら嫌だな…とか考えて箱の中にしまってある。

 時々箱を開けてそっと眺めると…それだけでもとても幸せになる。

 それが壊れる!!想像しただけでがっくりと肩の力が抜けてゆくのが自分でもわかった。

 いつもは無くしてしまったり誰かに盗られたら嫌だからカバンに入れてあるけれど…今回はそうするわけにはいかないようだ。

 ハイブコア潜入の依頼を受けてから、Gはずっと…ちょっとだけ、悩んでいた。

 

「…うーん…」

 

 こういうモノを預けられる場所、というと宿くらいしか思いつかない。

 でもその料金は結構高いのだ、そして保存はあまりよくないというのが常である。

 壊れるよりいい、だが…。

 自分が帰ってこられなかったとき、それがみんなの手に渡ったら(だって、延滞料金請求されるかも知れない)…こんなに大事にしてるって知れたら…気恥ずかしい、というか、かえって申し訳なくはないだろうか?

 特にセリフィアさんに。

 遺品みたいになっちゃうし。

 

「死ななきゃいいだけなんだけどな?」

 ハイブに魔法を打たれない努力は出来そうにないが、死なない努力は出来そうだ。

 Gは消極的につぶやいて袋に入れた宝箱を一つ、青龍亭のカウンターに乗せた。

 

「預かって欲しいモノがある…宝箱を一つ」

 

 

(『Gdex』より ◆ 2003年初出)

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