□ その時彼らは1 〜 村の中で □

 

「のう、ダーガイムよ。なかなか面白い奴らがやって来たぞ。まだまだ見捨てたモンでは無いって、人間ってヤツは。
 確かに馬鹿みたいな事もいっぱいするけれども、それでも女神エオリスが選んだのは人間じゃて。
 まあ、お前さんの立場も判る。あの時もそうせざるを得なかったのも、そして今もそうせざるを得ないことも。
 今の状態では、確かにそれが一番じゃろう。無駄な争いをせずにすむしな。
しかし、もしこの件が済めば、もしかして光明が見えてくるのではないかな。なにより、奴らの中には、あいつがいる。
 それが何よりの証拠じゃて。ソナタは気がすすまんじゃろうが、今のままで良いわけがあるまい。
 ちょっと考えてみておいてくれんかね。ソナタの力は必要じゃて」

 

 狭い部屋の中、ランプが一つだけ点いていた。

 暖炉の火は既に消え、急激に冷え込んでいく部屋の中、男は一人で話していた。

 しかし、彼の声を聞く者の姿はどこにもなかった。外は、雪がしんしんと降り続けている…。

 

 

(『序奏 エピローグ』より ◆ 2002年4月初出)

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