古代のアンデス文明およびマヤ文明を研究する同好会

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2014年11月の定例講座

ペルー・コスタの形成期研究最前線―ネペーニャ谷を中心に
講師:芝田幸一郎先生(神戸外国語大学准教授)

2014年11月15日(土)
東京外国語大学本郷サテライト


 ネペーニャ谷の中・下流域は北部海岸、中央海岸、山岳地方に囲まれた地域で、7か所の形成期遺跡が調査されていますが、チャビンの影響が議論されること、遺跡に重なりがみられ、編年構築に期待がかかるなど形成期研究の鍵となる地域です。講師は2002年からセロ・ブランコ、ワカ・パルティーダの発掘を行ってきました。両遺跡は2キロの至近にありますが、建築様式に多くの違いがみられます。両神殿は別々の集団に支えられて相互に競合する一方、遠方の神殿とは互恵関係にあったと考えられます。

 両神殿は形成期中期から形成期後期前半にかけて約600年間存在したことが確認され、BC1100年―BC800年の形成期中期をセロ・ブランコ期、BC800年−BC450年の形成期後期前半をネペーニャ期、BC450年―BC150年の形成期後期後半をサマンコ期と編年しました。

 セロ・ブランコ期にはともに装飾神殿が建設されましたが、セロ・ブランコでは円錐形のアドベを使用し、装飾も平面的であるのに対し、ワカ・パルティーダでは角錐台系のアドベを使用し、壁面装飾にも相違がみられます。ネペーニャ期には両神殿とも装飾神殿が埋められ、より大きな巨石神殿に変貌します。工事に伴う大饗宴が行われた痕跡や、山地系文化の流入がみられます。

 この時期に近隣にはカイランなど新規の海岸型神殿が現れます。これらはこの地域独特の建築様式で、平面的で内部に多数の広場を持ち、装飾は幾何学的文様でなされるなど、セロ・ブランコやワカ・パルティーダとは異なる社会を形成し、遠隔地との交流が限定的な地元の人々の集団と考えられます。

 サマンコ期には両神殿とも放棄されますが、山地系文化再興に対応できなかったためと考えられ、この谷には新興海岸型神殿のみが存続することとなりました。

 ワカ・パルティーダの装飾神殿では、側面最上部に猛禽類、その下に有翼人間、その下にジャガーのレリーフを発掘しました。空、空中、地上を象徴するものと思われ、最下部には地下を象徴するものの存在が期待されます。正面上部には超常的人物、その下に半超常的人物のレリーフを発掘しました。その下には通常の人物の存在が予想されます。神官の権威や幻覚剤儀礼の段階を表すものと考えられるからです。ただ、全貌を解明するには今後の長期にわたる発掘が必要です。



*受講には申し込みが必要です。詳しくは入会案内をご覧ください。