タイトル | : 一案 |
投稿日 | : 2006/10/20(Fri) 17:41 |
投稿者 | : tula |
19話冒頭の「レスタトの思い」の部分ですが、あのままだとかえって読みにくいということもあり、段落構成アリに変えようかと思います。
以下のように変えてよければ、22行減。
あとから戻せるので、book17(19).txtは修正後データとして更新済み。
贅沢だと言われたこともある。
くだらない拘りだと揶揄されたこともある。
でも。それでも。
僕は『特別』になりたかった。
僕は生まれた時から代用品だった。正確には代用品にさえなれなかったのだが。
僕の生まれた家は神聖ガラナークでも有数の貴族アンプールの家。アンプールでは代々女尊男卑が叫ばれており、家督を継ぐのも要職にあるのはすべて女性だ。この家で僕やルード兄様の存在などさして重要ではない。この家での15年はそれを嫌というほど思い知らせてくれた。姉様の周囲にはいつも人だかり。優秀な教師がつき、何れは国政に携わる者として姉様は磨き上げられていく。僕たちはいつもそれを遠目で眺めているだけだった。
悔しかった。
だから努力した。僕はここにいるのだと、認めてほしかった。
けれども。
どれほど武術の腕を上げようとも。
どれほど知識を収めようとも。
いかなる努力も認められることは無かった。一度も顧みられることは無かった。
思い知った。罵倒されるより、嘲笑われるより辛いのは無視されることなのだと。
思いつめて母様に聞いたことがあった。僕は一体何の為に生まれてきたのですか、と。母様は言った。シャルレインの代わりがほしかった。なのに男だったなんてね、と。そう言いきる母様には少しもてらいがなかった。そして僕は。
期待することを放棄した。
時が経ち、兄様は騎士の道を選んだ。功を立てさえすれば一代かぎりのものとはいえ爵位も領地も授かることが出来る。このままここで冷や飯食らいで終わりたくはない、兄様はそう言った。
でも僕は違った。神官の道を選んだ。戦士となるに何が不足していたわけじゃない。むしろ僕は戦士としての才能に恵まれていた方だろう。でも僕は神官になりたかった。
ここが神聖ガラナーク王国だったから。
格式の高い行事には必ず神官が必要とされる。国王に王冠を授けるのは大司教の役割だ。神聖ガラナークでは宗教と政治とはすでに不可分となっている。大神殿はエオリス正教の総本山であると同時に神聖ガラナークの政治の中枢でもあるのだ。その大司教ともなればどれほどの発言力をもつことか。
だから僕は神官の道を選んだ。血筋ではなく、自らの実力を証明するために。
そして、僕の願いはかなえられた。
神は僕だけに「神託」を授けてくださったのだ。